中学までスパルタ学習塾に通っていた僕は、高校に入ると同時に塾を辞め、急に怠け者になった。
キンコウ楽器という店で買った、1万1千円のアコースティック・ギターは僕に勉強をさせなかった。そうなると類は友を呼ぶ。クラスメイトの坂本君は、音楽はやってなかったけど、気の合う怠け者だ。
「俺はギリギリ3年なれそーやけど、前田はヤバイなぁ〜、つーか卒業できんのかいな」
坂本君は僕と同じで、授業中は睡眠時間だと解釈していたので、ドッコイドッコイの成績だった。会うたびにその予想が的中すると力説していた彼だったが・・・
坂本君の予想は外れてしまう。
彼は高校2年生の秋に死んでしまった。
原因は心臓麻痺。・・・何万人に一人とかいう確率だそうだ。彼が来なかったその日の放課後に、クラス全員で彼の家に行った。顔に白い布を被せられて寝ている坂本君の横で、彼のお母さんが泣きながら「会いに来てくれてやって、ありがとうね」と言った。
葬儀の2日後に予定どおり実施された中間テストの解答用紙は名前だけを書いてすぐに家に帰り、「生きるとは、一体何なのだろうか?」といった内容の、重〜くて、暗〜い詩を書きまくった。
その後、ギリギリ卒業した僕は、近所の「ガーリョ」という居酒屋で、その詩を曲にして初のオリジナル・ソングを弾き語った。精一杯歌い上げた。
「正志の歌は暗いな〜」とマスターの伊達さんに言われて、
「だって今まだ、この曲しかないんですもん!」と少し不機嫌になった僕が抱えていた、はじめて買ったアコースティック・ギター。
アコギは今も、それ一本しか持っていない。